2013年4月30日火曜日

まあだだよ

久しぶりに黒澤明監督の「まあだだよ」を観ました。

1993年に公開された黒澤明監督の最後の作品です。あまり映画には詳しくないのですが、私はこの映画が大好きで何度も観ています。観ている間中も観終わった後もほっこりと幸せな気持ちになるからです。 日常の生活で色々ありますが、一番大切なのは何なのか、この映画を観ると分かる気がしてくるのです。

この映画を観て毎回思うのは、親切の連鎖です。先生(松村達雄さん)や先生の奥さん(香川京子さん)のやさしさが先生を慕う元生徒たち、ご近所の方たちに広がっていっているのがよく分かるのです。教職を退いてから引越しした先の家で、丁寧にどろぼうへの案内経路をドアや壁に貼ったりしたおちゃめさや、戦後で物が不足していた時、雨の日に傘をさした教え子に「何か必要なものがあるか?」と聞かれ、「傘がほしい」と答えてその教え子の傘をちゃっかりもらったり、何をしても先生はみんなから愛され、尊敬される存在なのです。

先生のやさしさだけではなく、人に対する丁寧さ、謙虚さが素敵だなと思いました。先生の愛猫がいなくなった時に、小学校で迷い猫のビラを配るのですが、その時も先生は小学生に丁寧な言葉で話しかけていましたし、先生を囲む「摩阿陀会(まあだかい)」でも教え子の孫たちにやさしく語りかけるシーンも印象に残りました。

1993年公開の作品でしたので、私はその時には既に大人でしたが、子どもの頃にこの映画を観られていたら私の人生もしかしたら変わっていたかしら?と思います。

それから、教え子の一人に所ジョージさんが出演されているのですが、この映画の中でじわーっといい味が出ているな、司会者の印象が強い方ですが、いい役者さんでもあるのだなと思いました。

物語は淡々と進んでいきますが、とても幸せな気持ちになれる映画だと思います。