2013年5月10日金曜日

デルス・ウザーラ

昨晩は黒澤明監督の「デルス・ウザーラ」を観ました。

  • 製作国:日本・ソ連(1975年)
  • 監督:黒澤明
  • 脚本:黒澤明、ユーリー・ナギービン
  • 出演:ユーリー・サローミン、 マクシム・ムンズク
  • 上映時間:141分

この映画の魅力、それは映画のタイトルでもあるデルス・ウザーラ(マクシム・ムンズク)の生き方以外のなにものでもないと思います。現代社会に生きる私たちは知らず知らずの内に色々なしがらみにとらわれていて、それに比べてデルスの自由で質素な生き方は非常に魅力的でした。生きるのに本当に必要なのは何なのか、教えられた気がしました。

この表現が正しいのかは分からないのですが、私にとってデルスはとてもかわいらしい人間に思えました。以下、私が個人的に気に入ったデルスです。他にももっとたくさんあります。デルスはとても魅力的なのです。

・ソ連の軍人さんよりもピストルの名手
・森の住人だけあってサバイバル術に長けていて何度も軍人さんたちの危機を救う
・人情がとても厚い
・記念撮影で軍帽をちょこっと被らされる
・軍人さんの中にいるととても小さく見えてかわいらしい

信頼関係を築いた後、第一部の最後でアルセーニエフ隊長と互いに呼び合うシーンはじーんとくるものがありました。第二部がはじまっても隊長は「デルスがいたら・・・」とデルスの事ばかり考えています。そして遂に再会する二人。離れていた時間を埋めるように語り合う二人&そんな二人を遠くから優しく見守る隊長の部下たち。固い友情で結ばれているのが伝わってきます。

第二部で筏が流され、筏の上に隊長と二人残されるデルスですが、やはりそこはさすがデルスです。隊長を先に逃がし、自分はギリギリの所で筏から飛び降ります。先に逃がされた隊長ももう必死でデルスを流れの激しい川から救出しようとします。

このままずっと二人の友情が続けばいいのに、と願いましたがやはりそうはいきませんでした。森で狩をしながら生きるデルスにとって大切な視力が衰えはじめるのです。デルスを心配する隊長は町にある自宅で一緒に暮らそうと連れて行きますが、森で暮らしてきたデルスは町での暮らしに適応できません。町では鉄砲も撃っちゃダメ、商人から水を買う奥さんを見て奥さんがだまされていると思うデルス、薪を買う奥さんを見て公園にある木を切って警察につかまるデルス。自由に森で暮らしてきたデルスには町の決まりごとの多い不自由な暮らしが合わないのです。もともと小さかったデルスの背中が日に日にどんどん小さくなっていきます。隊長の奥さん、子どもとも仲良しですが、終に森に帰る決心をします。そして物語は結末に向かいます。

二人の友情がすばらしいです。そして、文明化された社会に慣れてここで生きている私はデルスの自然体な生き方に強い憧れを持ちました。便利なはずの世の中なのに、振り返ってみればわずらわしいことの何と多いこと。その便利さが心を麻痺させたりしているのかしら、とも考えさせられました。

何でもっと早く観なかったのかしら、と心から思ったすばらしい映画でした。


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