2013年5月16日木曜日

ウンベルトD

「自転車泥棒」で有名なヴィットリオ・デ・シーカ監督の「ウンベルトD」を観ました。

  • 製作国:イタリア(1962年公開)
  • 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
  • 脚本:チェザーレ・ザヴァッティーニ
  • 出演者:カルロ・パティスティ、マリア・ピア・カジリオ
  • 上映時間:87分


老齢年金の昇給を求めるデモに参加するウンベルト・D・フェラーリ。彼はフライクという名前の小さなかわいい犬と一緒にアパートに住んでいます。しかし、大家である女性は家賃を滞納する彼を追い出したくて仕方がなく、勝手に彼の部屋をカップルに時間制で貸してしまいます。フェラーリは延滞している家賃の内、自分が今持っている代金で先に払おうとしますが、大家は「全額一括返済!」と一部返済を認めません。途方に暮れたフェラーリは食費を削ろうと病院に入院してみたり、友人に借金を頼もうとしたり、果ては物乞いをしてみようとしたりしますが、お金を作ることができず、結局は自分の部屋を静かに出て行く、という物語です。

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主人公が貧しさに苦しむ、という内容の決して楽しい映画ではないのですが、フライクとおじいちゃんの友情がほほえましくとても好きな映画です。貧しさに困りながらも、人間の尊厳を失うことだけは避けようと懸命に生きるおじいちゃんの生き方が素晴らしいと思いました。

金策に困ったおじいちゃんは自分では物乞いをする勇気が出ず、フライクに帽子をくわえさせて物乞いをさせてしまいます。その時のおじいちゃんたら、柱の陰からフライクを心配そうに見守ります。結局フライクの物乞いは割と早く打ち切りになりますが、この小さなわんちゃん、いい演技です。

おじいちゃんが入院している時に、大家さんのメイドにフライクを預けるのですが、大家がドアを閉め忘れたばかりにフライクはアパートから逃げてしまいます。必死で探すおじいちゃん。保健所のシーンでは犬たちが処分される場所も映し出され、おじいちゃんの不安を煽ります。観ている私も「フライク、どこー?どこなの?」とおじいちゃんと一緒になって心配になってしまいました。フライクとおじいちゃんが再会できた時の喜びはなかなかのものです!

部屋も追い出されて、フライクを安心して預けられる先も見つけられないおじいちゃんは、フライクを抱いて列車に飛び込もうとします。危険を察していち早く逃げ出すフライク。それまではおじいちゃんの後をついてまわっていたフライクですが、おじいちゃんから離れていきます。まるで「僕、死にたくないよ、おじいちゃん!やめてよ、おじいちゃん!」とフライクが言っているように見えました。そんなフライクの心を取り戻そうと松の実を必死で投げるおじいちゃん。しばらくしておじいちゃんの所に戻ってくるフライク。結局二人(一人と一匹)がどうなるのかは分かりませんが、二人を引き離せるものは無いんだな、と深い絆で結ばれた二人をうらやましい気持ちで観終えました。



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