2013年5月27日月曜日

赤ひげ

黒澤明監督の「赤ひげ」を観ました。
山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」は何度も読んだのですが、映画をまだ観た事がありませんでした。

  • 製作国:日本(1965年)
  • 監督:黒澤明
  • 原作:山本周五郎
  • 出演:三船敏郎、加山雄三、山崎努
  • 上映時間:185分
【あらすじ】

長崎で蘭学を学んだ青年医師保本登(加山雄三)は、自分の知らない間に江戸の小石川養生所の赤ひげと呼ばれる医師、新出去定(三船敏郎)のもとで働くように決められていた。はじめは断固として赤ひげのもとで働くことを拒否し、小石川療養所から追い出されるよう仕向けていた。しかし、患者と接する赤ひげの真摯な態度に次第に心を開き、小石川療養所で働く人々と共に患者の治療にその情熱を傾けていくようになる。
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原作でもそうなのですが、私は佐八のエピソードが好きです。死を迎える前に自分の過去を長屋の人々に告白していく佐八とそれを見守る佐八を慕う長屋の人々。自らの手で最愛の妻を殺めてしまう事になった悲しい過去は心に重く響きました。

おとよ(二木てるみ)のエピソードは原作から離れた、映画のオリジナルです。虐げられた暮らしを長い間送っていたおとよが赤ひげにより小石川療養所へ引き取られ、徐々に心を開いていく様子に感動しました。おとよを看病してくれた保本を好きになりすぎて、保本のやさしさを踏みにじってしまったり、おとよの感情が細かく表現されていました。
特に2つのシーンが印象的でした。
ひとつは、娼家から連れてこられてきて保本が与えようとする薬を拒否。保本に代わり赤ひげがおとよに薬を与えるシーンです。薬のさじを払いのけるおとよ、「うむ」と低くうなりながらも忍耐強くおとよに薬を与えようとする赤ひげ。そして、ようやく赤ひげから薬を飲むおとよ。このシーンは、静かに赤ひげが保本に患者とどう接するべきなのかを身をもって教えているようでしたし、赤ひげから薬を飲んだおとよが治療を受け入れはじめたとても良いシーンだと思いました。
もうひとつは、娼家の女主人がおとよを迎えに来た時のシーンが好きです。着ていた着物を馬鹿にされたおとよは、保本からもらった着物を女主人に見せつけ、自分はこんなに療養所のみんなに良くしてもらってるんだ!と言います。あんなに心を閉ざしていたおとよがこんなに元気になり、自分の意思を伝えられるようになるなんて・・・とこういうエピソードに弱い私はおとよのおばあちゃん気分になりました。
また、長坊とおとよの「飴」を巡るやり取りにもうるうるしてしまいました。人と関わることのできなかったおとよが、他人に優しくしている姿は感動以外のなにものでもありません。虐げられた暮らしを送ってきたおとよが、他人に哀れみの心を持つのです。私がおとよなら決してこんな風にはなれない、おとよは何て慈悲深い少女なのでしょうか。

いくつかのエピソードを織り込みながら、ラストのシーンを迎えます。このラストのシーンでは保本と赤ひげの心の結びつきがよくよく伝わってきて、ああ、また良い映画を観たなととても温かい気持ちで観終えました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。



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