2013年5月13日月曜日

ケス

ケン・ローチ監督の「ケス」を観ました。
2006年に「麦の穂をゆらす風」でカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した監督です。

  • 製作国:イギリス(1970年公開)
  • 監督:ケン・ローチ
  • 脚本:バリー・ハインズ、ケン・ローチ
  • 出演:デヴィッド・ブラッドレイ、フレディ・フレッチャー
  • 上映時間:110分 

この映画の主役はヨークシャーの貧しい炭鉱町で暮らす15歳の少年、ビリー・キャスパーです。
ビリーは家ではザ・乱暴者のお兄さん、ジャドにいじめられ、学校でも生徒や先生からいびられて、何の希望も持てない日々を過ごしています。しかし、ある日ビリーは農場にあったハヤブサの巣からヒナを拾い、「ケス」と名づけて育てはじめ、ケス一色の日々がはじまります。ビリーとケスはどんどん信頼関係を築いていきます。学校の英語の授業でケスとの事をクラスの前で発表する機会があり、その時はじめてビリーはいじめられっ子ではなくて先生や生徒から賞賛の声を浴びます。しかし幸せは長く続きません。ある日、ジャドから賭け事の為のお金を預かったビリーは、「どうせ当たらないお金だし」とジャドのお金を自分とケスのための食事に使ってしまいます。それに気付いたジャドは当然怒り狂ってビリーを追いつめていく、という物語です。

--------------------

イギリスの学校ってどこもこんな感じなんでしょうか?

もちろん、この映画は1970年の公開なので今も同じとは思いませんが、あまりの質の悪さに驚き、映画の本筋よりもこちらの方が気になってしまいました。こんな学校なら行かせるだけ無駄じゃないのかしら、と思いました。先生は威圧的で生徒をいびる事で自分のストレスを発散させているようにしか思えないですし、生徒たちは反抗的で行儀が非常に悪く乱暴者だらけです。揉め事の絶えない学校です。この町で生まれ育った子どもたちが貧しさから抜け出すのは相当難しいのだろうなと悲しくなりました。

主人公ビリーは設定では15歳という役のようなのですが、とても小さくて痩せている少年なので小学校3年生か4年生くらいなのかなと勝手に思っていました。映画の終盤でビリーが就職のための面談を受けているシーンがあり、「え!こんな子どもなのに就職?」とビリーが生きている土地の厳しさを知らされました。しかも、面談で出てくる職種っていうのが、また体力勝負の仕事ばかりで更に辛くなりました。いえ、ビリーって本当にやせっぽちの少年なんです。体育の授業の後、シャワーを浴びるシーン(これもびっくりしました)があったのですが、背中の骨が浮き出ていて栄養をきちんと摂れていないんだなと思ったもので、そんな痩せている少年に肉体労働させるの!?ともうすっかりビリーの母親気分の私は思ったのでした。

こんな過酷な環境の中で、やっと見つけたケスを育てると喜びがビリーの生活を変えます。勉強の為に古本屋からハヤブサの本を盗んだり(ダメだよ、ビリー!)、ケスの為に餌を捕まえたり、一生懸命世話をし、調教しているビリーは家や学校にいる時とは大違いでとても生き生きして目が輝いています。大体予備知識無しで映画を観る私はこの時点で「きっとラストは有名な鷹匠になったビリーが出てきて、これは大人のビリーの回顧録なんだ」と決め付けていました。結末は省きますが、苦しいけれど非常に現実的で見ごたえのある映画だと思いました。

ランキングに参加しております。
気に入っていただけたらクリックしていただけると嬉しいです。
とても励みになります。